新薬開発・新薬ができるまで

医薬品開発の歴史

日本の医薬品開発の歴史を考える中で、第一次世界大戦及び第二次世界大戦が大きな節目となっている。戦争以前の多くの医薬品は海外からの輸入に頼っており、戦争に関わる中、海外からの需給が途絶えたことにより、国内の有機合成の分野の発展が必要に迫られた状況となり、飛躍的な発展を遂げたことが出発点となると考えられる。
それ以前のエフェドリンの発見等、貴重な発見が日本でもなされてきたが、基本にあるのは、海外からの輸入であったが、まだまだペニシリンの製造に関する技術は海外からの輸入であり、それ以後も一部の薬剤では画期的な新薬が創出されるものの、欧米に比べると、まだまだ差があり、現状でもそれは変わっていないと考えられる。
現在の医薬品の開発においても、日本の臨床試験のスピードの遅さを指摘する声も少なくない。
臨床試験が大きく変わったのは、1997年4月に制定された「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令=新GCP」が翌年1998年に実施されてからである。

新GCPの制定にあたっては、1991年11月から6回開催されているICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)の内容を受けて制定されたものである。ICHの目的は、データの国際的な相互受け入れと臨床試験や動物実験等の不必要な繰り返しを防ぎ、承認審査を迅速化するとともに、新医薬品の研究開発を促進し、優れた医薬品をより早く患者の手元に届けることとしている。
新GCP施行により、国際的な薬物評価基準が国際化され、臨床医学を実践する臨床医,医学研究者に求められるものは単なる直感や,あやふやな経験に基づく医療ではなく,明確な証拠に基づく医療活動である。つまり,医学界の大潮流となっているEBM(Evidence-Based Medicine)がKey Wordとなっている。
このことは、日本国内での医薬品開発の大きな影響を与えている。
ICHからスタートし、新GCPが制定され、薬事法が改正され、その結果として医薬品の規制緩和がなされ、外資系企業の活動が活発となり、護送船団の一員であった国内中堅メーカーは、新医薬品の開発から徐々に撤退する一方、新薬開発を目指す企業は合併を行ない、その規模を拡大している。

このような状況の中、医薬品産業はグローバル化がますます加速し、国内企業のサバイバル競争の中、外資系企業(メガファーマ)が国内シェアを急速に伸ばしている。 その状況の中での、臨床開発試験はその重要性を増し、製薬企業の臨床開発部門の拡充とCROの業務拡大が進むものと考えられる。

 

 


高脂血症治療剤(スタチンができるまで)

高脂血症治療は、スタチン系薬剤が開発される前と以後では大きく変わりました。
その代表的薬剤がメバロチン(三共開発)、一般名:プラバスタチンナトリウムです。
現在では、メバロチンをはじめ、リポバス(万有)、ローコール(ノバルティス)、リピトール(ファイザー/アステラス)、リバロ(興和)、クレストール(塩野義/アストラ)等、多くの薬剤が開発され、そのマーケット規模は全世界で260億ドル(2003年)にもなり、日本国内だけでも2800億円にも上っています。
このスタチン系薬剤の開発の主役は、遠藤章氏(現:東京農工大学名誉教授)です。
遠藤氏は、1970年代初頭に「コレステロール合成の律速酵素:HMG-CoA還元酵素の阻害は体内コレステロール合成の抑制と血中コレステロール合成の抑制と血中コレステロールの低下に有効である」という仮説を立て、共同研究者らと共に数千から1万株以上の微生物培養液の中のアオカビから「メバスタチン」を発見しました。
しかし、その後、三共中央研究所の検討で、メバスタチンはラットで血清コレステロールを全く下げず、1974年に開発は中止となりました。
しかし、遠藤氏は、その構造と作用機序から考えてこの理想的な新薬候補を諦めることができず、数人の仲間と作用メカニズムと薬理作用の研究を続けました。
1979年、遠藤氏は東京農工大学に移り、モナコリンKを発見、同時期には、三共からデータ等を提供してもらっていた米メルク社がメビリン(後のロバスタチン)を発見しました。この両物質は同じものでした。
 その後、メルク社は開発のスピードアップとその副作用を克服し、1987年秋には「世界初のスタチン製剤」ロバスタチンがFDAの認可を得て発売されました。(日本国内では、類似化合物シンバスタチン:リポバスを発売した)
一方、三共は、更に研究を進め、臓器毒性の少ないメバロチンを発見した。メバロチンは水溶性の物質で、脂溶性のメバスタチンより副作用が少なく、尚且つ強力な作用を有していました。
 1989年、ついにメバロチンは誕生しました。
今や全世界の高脂血症患者のうち、、スタチン製剤は約3000万人以上にも使用されており、心疾患(冠動脈疾患)や脳疾患(脳梗塞)等の予防に役立っています。